フォトグラファー 南雲暁彦氏 

広告の現場や講師として大活躍のフォトグラファー南雲暁彦氏。玄光社コマーシャルフォトStill Life Imaging 連載時の写真を銀座ライカプロフェッショナルストアにて展示中。迫力の高さ約2mの巨大なプリント、ライカSシリーズによる美しい描写もシビれます。

期間:2019年10月15日(火)~11月9日(土) ※11月5日(火)~7日(木)は催事のため閉館 会場:ライカプロフェッショナルストア東京

期間:2019年10月15日(火)~11月9日(土) ※11月5日(火)~7日(木)は催事のため閉館 会場:ライカプロフェッショナルストア東京

南雲氏は大学の同期。新入生時代からの友人です。その頃からカメラに詳しく多趣味、そして寛大な教え上手でした。過酷な風景撮影から複雑なブツ撮り、ポートレートまで何でもござれの南雲くん。常に情報はアップデートで最前線。そんな彼が満を持して初の著書を出されます!出版予定日は2019年10月28日。アマゾンで予約したぞ。

Still Life Imaging スタジオ撮影の極意 (コマーシャル・フォト・シリーズ)

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なんだか宣伝になりましたが、オススメです。

2019年10月18日記載

 

篠山紀信氏 プロほどわかる巨匠の凄さ

日大芸術学部の1年生の時、篠山紀信さんが学生に向けて講演にいらっしゃいました。素晴らしい写真が次々に映し出され、パワーと喋りのおもしろさに圧倒され、講堂はあっという間に笑いと熱気の空間に変わったのを覚えています。第一線のカメラマンはやはりすごいなと思ったものです。

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昨年末に婦人公論誌用に撮られた樹木希林さんの前で。

今週店頭に並んでいる雑誌「婦人公論」10/8号で巨匠を撮らせていただきました。

篠山さんの凄さはプロカメラマンほどわかるかもしれません。フィルム時代に、重くて大きく、操作も面倒な大判カメラを使って撮影されています。それゆえに大伸ばしのプリントも美しいです。大衆に向けた写真にこだわり、常にトップクオリティーの仕上がりを目指されていたのではないかと思います。

大相撲の集合写真などは8×10を3機並べて撮影したと聞いたことがあります。光量もシビアな時代。どれだけ大変なことか。。それ、、やりますか。。という撮影への熱量。

また人気絶頂期のタレントは撮影時間がありません。「実際の現場はバタバタしている」と内覧会でもおっしゃっていました。山口百恵さんがビキニを着て水辺で寝そべっている有名な写真。「どうしてこんな写真が撮れたのかってよく聞かれるのだけど、きっと彼女は疲れて眠かったんだよ!」と謙虚なジョークを飛ばして取材陣を沸かせます。

自分の都合だけでは動けない仕事の撮影現場。そのバタバタの中に「写真の神様」を降ろすのですからやっぱり巨匠です。

篠山紀信展 写真力 」 Gallery AaMo 東京都文京区後楽1-3-61 東京ドームシティ10月27日(日)まで

 

投稿日2019年9月24日

 

 

作家吉村昭にハマる 「関東大震災」

きっかけはなんだったんだろう。吉村昭の小説「漂流」を読み、続けて「破船」を読了。読み出したら止まらない、恐るべし吉村昭。中毒になった私は防災の日にちなんで菊地寛賞受賞作「関東大震災」に手を伸ばしました。71wUN7EtP-L.__BG0,0,0,0_FMpng_AC_UL320_SR222,320_.jpg

こちらは小説ではなくノンフィンクション。淡々と細やかに描写され、私の頭の中はそこからイメージされた映像が回り始めます。

まず惨事が自分の想像を超えておりました。防災意識は江戸時代の方が優秀だったと指摘されていますが、そのため被害も甚大に。そして情報が無い中に飛び交うデマに次ぐデマ。人々の神経衰弱による判断の低下、治安の悪化。衛生問題から深刻な人道的問題まで克明に書かれています。場当たり的な行動と過密都市でならではの人の振る舞いの恐ろしさを改めて考えるきっかけになりました。

災害時、私は噂や情報の鵜呑みは一切しないと決めました。

記載日2019年9月22日

 

 

 

 

 

ロバートキャンベル 井上陽水英訳詞集

作品テキストの英文を作っています。私の英語力は永遠の初中級レベル。日常に英語力の必要がない(言い訳です)私は、たまにダラダラとアプリで勉強するだけ。一向に上達しません。

今回は詩的表現が多数あるため自分で翻訳しようと決めたものの悪戦苦闘。その折この本をたまたま見つけました。

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本が、必要に応じて向こうからやってく来ることありませんか?本屋をフラフラするとなんだか呼びかけられているような、その棚を見ると気になるタイトルが。

日本人がもつ時制感覚。自分たちが気に留めていないものの、西洋文化から見るとかなりユニークに感じるという肌に染みついた森羅万象の感覚。それを言葉にした時の英訳の壁、それはそれは大きな壁。写真家や画家なら経験があると思います。

キャンベルさんは西洋人の文章や物事、その捉え方の違いをわかりやすく、様々なかたちを挙げて教えてくださいます。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

言わずと知れた川端康成の「雪国」。この一文だけで、日本人である私たちは様々な情景や予感、含み、そして美しさを感じます。放映されていたドナルドキーン氏と川端氏の対話も例に上げ、キーン氏が「どこに主語があるのだろう、男女の会話は何を意味するのだろう、多くの部分が曖昧なのです。」と英訳するにあたっての苦悩を告白するというエピソードは衝撃でした。(川端氏がどうお答えになったかは是非本文中でご確認くださいませ)

キャンベルさんが天才井上陽水の歌詞世界をどのように英文のピースに入れていくのか。その考え方や作業法がとても参考になりました。私は自分が持つユニークな感覚を、西洋ルールで潰してはいけないと思ってきました。この感性を肯定し、うまく言葉に起こすことに時間を必要としました。

日本古典文学を熟知するキャンベルさんだからこその愛と熱意、それに応える陽水さん。お二方がとても勇気を与えてくれる本を世に出してくださいました。

2019年9月15日記載

 

画家 淺井裕介さん 圧巻の「いのちの木」横浜美術館

思わず息を呑んだ、淺井裕介さんの手掛ける豊かで優しい紅い空間。そこには何気にシャガールやらマックス・エルンストらも掛けられています。

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椅子に座ってぼ〜と眺めていると、目が慣れてきて、赤い部分からも絵が浮かんできます。

アーティストが所蔵作品を選び、自身の作品とコラボして展示空間を創った横浜美術館・企画展「Meet the Collection ―アートと人と、美術館」は見応えがありました。

この淺井氏とボランティアによる美しい壁画は、期間が終われば塗りつぶされてしまうそうです…..。え、そんな…。

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わ〜おちる〜!小さいのです、これら。見所満載。

傑作が傑作を高め合って融合する作品空間。素晴らしい展示に出会い、心が浄化されました。行って良かった。9月1日まで。

2019年8月16日記載

 

原田治展 マイオサムブーム再び

世田谷文学館の『原田治展「かわいい」の発見』に行きました。

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寝起きでお出迎え?!

可愛さはもちろんのこと、その多彩さとクリエーターとしての仕事のあり方が存分に垣間見れるのも魅力です。

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発注側のラフの変更理由を具体的に説明してます。

私が一番気になったのが、生前公開されなかったという抽象的絵画やオブジェやコレクション。デザインやグッズ製作とはまた違う、アーティストとしての霊感に従った世界観。改めて天才の多彩さを感じます。

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撮影もOK

見る側の、”オサム”さんに出会える展覧会です。

実は1番のお目当てがこれ、トートバック。展示に合わせて販売されるはずと密かに意気込んでおりました。売店に行くと、今の時代の空気感の合わせたリニューアルバージョンが4種類も!

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全種類欲しかったけど、ぐっと堪えてひとまずはコレ。でもまた買いに行きそう。。

チラシもおもわず額に入れて飾りたくなるこの展示、2019年9月23日までです。images

記載日2019年8月4日

映画 「アルキメデスの大戦」

息を呑むプロローグ。

導入部分から引き込まれると、ああ、これ絶対面白いはずと期待が膨らみます。

26673巨大戦艦建造を推進する平山中将(田中泯)、彼のものの見方はとても印象的。

遠いようでそう昔のことではない時代です。

2019年7月30日記載

 

写真家で現役医師 石井靖久さん

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©️Yasuhisa Ishii

ライカギャラリーで個展「細胞の海、神経の森」を開催中の石井靖久さん。本業であるお医者の視点を盛り込んだという作品です。

ハービー山口さん、グラフィックデザイナーの町口覚さんがゲストの豪華トークショウに伺いました。

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すでに町口さんと2冊の写真を手がけている石井さん

ご自身のイメージを表現すべく、写真以外の表現手段も考えたいと語る石井さん。

ハービーさんは「視点を持つことが大切。抽象でも具象でも。異文化、そしてちょっと自分より”上の人”と接していくことが大事。」写真家の視点をどう成長させていくか、具体的なアドバイスが響きます。

「やっぱり”人”なのね。だったらもっと出せ!なの。評価?このご時世、誰でも撮れるのが写真。だから写真で認められようなんて思わないこと。理性の崩壊大歓迎だよ。」と町口さん。”見てる量”が断然違う方の、何気に深いお言葉。

自ら進行役を買って出たハービーさん。上記は一部ですが、お二人から話を引き出す御大の余裕が、参加者にインスピレーション満載の時間を作ってくださいました。

「細胞の海、神経の森」展 (ライカギャラリー東京)8月18日まで。

記載日2019年7月28日

 

試写会 「アートのお値段 The price of everything 」

「なんで?」

と多くの人が首をかしげる現代アート、そこに値付けされる破格のお値段。

その疑問に切り込んだ作品です。赤裸々に、この世界の仕掛けを教えてくれる本音も出てきます。10c78efee5ff1e39

 

 

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ドッと笑いが起こります。

試写後は編集者、美術ジャーナリストの鈴木芳雄さんとIMA編集部編集長の太田睦子さんのトーク。

”アート界のおばちゃんトーク”に思わず吹き出します。軽妙に、わかりやすく説明してくれ、ああ、なるほど、そういうことだったのか、と映画制作側の仕込みに気がつけます。一部、Twitter(鈴木さん)にもあげられていますので鑑賞後前後にぜひ。公開は8/17日から渋谷ユーロスペース。鈴木さんのトークショウがあれば鑑賞と合わせてオススメします。(現時点では確認できず)

もし私がアートって何?と聞かれたらどう答えるかな。 私ならこう答えます。

「アートは密度、そしてあなたのこと。」

 

2019年7月24日記載

 

 

 

映画「新聞記者」

平日の午後にも関わらず満席でした。

心に残るセリフがいくつもありました。

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過去の、実際のニュースが次々と思い出されてゆき、鑑賞途中から心臓がばくばく、震えがブルブルと始まる始末。

それぞれの「正義」がぶつかり合う、のではい。大胆な圧力をかける構図と仕掛けは、ぶつかり合いを超えて一方的な抹殺へ。勉強になります。

相手の伝えたいことに耳を傾け合える空間。最善の道を模索し合い、再び検証し修正していける社会はどこに。

この国は誰のものか、と思いました。

2019年7月8日記載