清水朝子作品集 「Finding A Pearly Light」について

この本は私が辿った13年間をまとめました。本のしなり感にこだわり、美しい印刷でリラックスしながらどのページからもめくれるようにしてあります。地球という彼女の呼吸を感じた私は、やがて森羅万象や同じ星に生きた賢者の呼吸に目を向けます。2006年から2019年までの6作品と9つの散文を、時系列なカタログにしなかったのは、眺めていると魂が安らぐような本を作りたかったからです。

「彼女のため息にも似た、ちょっと辛そうな吐息が聞こえてきた(本文より)」

2006年1月、出版社社員だった私は休暇を得て、一人南米ボリビアにあるウユニ塩湖へ向かいます。きっかけは90年代後半に見たガイドブック、そのコラム欄にある小さなモノクロ写真でした。水平線と雲が万華鏡のように反射している風景が心から離れなかったのです。ここで撮影されたのが「On Her Skin」(2006)。30代半ばになっても自分の作風が掴めていなかった私は焦っていましたが、ハッセル500CMを構えていると中央から二人が歩いてくる。偶然で幸運の授かりものでした。同時に五感が感じます。地球がなんだか息苦しそうだと。それは”彼女”の表面を闊歩するニンゲンが関係していることは確かで、まだ知られていない観光地だったウユニ塩湖にも、訪問者が捨てたティッシュが大地に溶けず残っていました。

「その静寂に私は理想を求めた。未熟な幼い理想を(本文より)」

そこで、私は以前、天国があるとしたらこんなところではないだろうかと感嘆した地へ向かいます。小雨が降る肌寒い冬の朝、美しい馬が佇んでいました。ここで作品「Infinity」(ポルトガル 2009)を制作したのち私は、より苦しくなります。世界では絶え間なくいろんなことが起こっているのです。なぜだろう。私の興味は自分たちヒトのあり様に関係する見えないもの、”意識”や”想念”に向かいます。

「言葉を授かり、思考に包み込まれたとき、遠くなった彼らのささやき(本文より)」

あれこれと考えて精神が疲れていた時期、森羅万象と思考にフォーカスした「Storyteller」(日本 2012 – 2018)を、同時進行でやはり思念という不可視なものが、現存する社会を形にして生み出すのだと考え、工場夜景をバックにシャボン玉を飛ばす「Portraits without a Face」(日本 2013 – 2017)を制作します。七色の光玉には”今”を作り上げてきた人々へ敬意も込め、浮遊する魂のような意味も含めました。

「曖昧さと不確かさ、矛盾の重さ、薄墨色に唸る波が見える(本文より)」

撮影という行為は、肉体的なリアリティがあります。重い、寒い、面倒、時間も費用もかかる云々。しかしこれがよかった。制作の実務的な疲労感や仕事場で起こる緊張感は、問いかけを繰り返すほどに頭でっかちになることを抑制してくれました。相反したように思考から解き放たれる瞬間、または不可視なものの密度が集約される瞬間が制作中に起こります。想定を越えたカットを授かる。作為を超えた作為と言うのでしょうか。

「セイギとセイギがぶつかり合う 激しく胞子がまきあがる(本文より)」

2014年頃「葆光」なる言葉に出合いました。「あるが如く無きがごとき光」である葆光は、外にきらびやかに出る輝きではなく、内にこもった光をいいます。(岩波文庫「荘子」)真理や叡智を例えるとされ、2300年ほど前のアジアの哲学者荘子が言い表したものです。ここで私は簡単に手に入る答えは答えではないことにも気がつきました。そこから「Finding a Pearly Light」( 山形, 2018)や「Silence Awareness Existence」( Finland, 2019)が生まれました。

この13年の流れが自然と一つに束ねられてゆき、多くの方々のご協力を得てできた初作品集、ここに上梓させていただきました。

 

清水朝子 拝

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2020年3月16日記載

初作品集発売予定のお知らせ『Finding A Pearly Light』

2020年3月10日に初作品集を上梓させていただきます。

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本のしなり感にこだわり、リラックスしながらどのページからもめくれるようにしてあります。2006年、地球という彼女の呼吸を感じた私は、やがて森羅万象や同じ星に生きた賢者の呼吸に目を向けました。この本は私が辿ったその13年間をまとめました。眺めていると魂が安らぐような本を作りたいという思いがあり、2019年までの6作品と9つの散文を散りばめています。アートディレクター西部亜由美さんの美しく迫力ある装丁、プリンティングデイレクター熊倉桂三氏による深みのある印刷の世界を早くお見せしたいです。

詳細はまた追ってお知らせさせて頂きます。

告知して頂きました。IMAONLINE

記載日2020年2月5日

ブログ始めました。

アーティスト・イン・レジデンス プログラム(Artist-in-residence program)に参加しました。その1
写真家の清水朝子です。写真にまつわることを中心に書いていきます。

アーティスト・イン・レジデンスプログラム(以下AIR)とは アーティストが一定間、ある土地に滞在し制作を集中して行える環境を与えてくれる事業です。私は今年の元旦(2019年)から丸一ヶ月フィンランドにあるArteles https://www.arteles.orgにて、作品制作を見つめる時間を改めて自分に与えてまいりました。 この経験を少しずつ書いてゆきます。

どのように見つけたかというと、

HAPS 東山アーティスツ・プレイスメント・サービスのサイト。日本語なので便利です。AIRは世界中にあり、プログラム内容も様々。AIR滞在中の仲間に教えていただいたこのサイト、res artisは英文ですが情報量が多いのでオススメです。

res artis  http://www.resartis.org/en/residencies/

フィンランドのArtelesはシーズン毎にプログラムテーマが変わります。「Silence Awareness Existence」がArtelesが提示した昨冬のテーマでした。私の作風、根底にあるテーマに沿いそうと惹かれました。内容にはサイレントデイズ(週末は会話してはいけない)のルール、強要のないプレゼンテーションやミーティングがあります。施設には瞑想ルームやサウナも。

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次回は施設風景などをアップします。

Portraits without a Face

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Portraits without a Face
(2013 ~ 2017)

あなたの顔を覗き込むと

薄眼を開けて迷惑そうに

いや眩しそうに見上げ

また瞼を閉じた

 

ほんの1ヶ月前まで

羊水に浮かんでいた

その様子を聞きたいが

酸素世界の不便さに当惑しているのか

不機嫌極まりない

 

ところでこんな不思議なことが

当たり前に起こっている

太古の昔からお腹の中で人間が創られる

 

人は無垢な瞳と言うが、私にはそう見えない

キミらは一様に哲学的だ

 

キミの目覚めはいつから?

 

意識という厄介者が住み着いただろう

魂という覚醒が生まれただろう

 

それはどうやら宇宙の秘密

だから君は泣くことしか出来ないのか

その神秘を打ち明けられないように

 

ニンゲンはこの世でいろんなものを創る

 

君はその手で何を創るの?

 

解説

常に何かを意識し、未来に向かう。人々の思いや夢が社会に大きく関わります。そこで世界を形成する私たちの「意識」という概念を、光り浮遊する玉という形にのせました。一切のデジタル修正加工を入れず、シャボン玉を飛ばし、フラッシュを使うというオーソドックスな撮影方法で制作しています。カメラ:Leica S2

制作撮影地:神奈川 三重 茨城 静岡 千葉 新潟 岩手 福島

Storyteller

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Storyteller

眩い白雪に導かれ
その声を聞きにいく

白銀が世界を覆いはじめる

言葉を授かり、思考に包み込まれたとき                                      遠くなった彼らのささやき

そう
溜め込んだ考えを信じ込んで、
うまくいかないだけ

天から降る白い声が耳元に触れる

その声はとても小さくこわれやすい。

2012 ~
Camere: Leica S2

 

Infinity

uma1 uma3 uma2 uma4 uma5

Infinity

その静寂に 私は理想を求めた
未成熟な幼い理想を

肌寒い冬の朝
地面を覆う黄色い花
美しい生き物                                                  精霊の甘い匂い

安らかな終わり

やがて
霧雨はあがり陽が昇り
その姿もろとも消えていった

2009
Camera: Rolleiflex

 

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