A.I.R滞在記その14  サイレントデイズ、そしてコミュニケーション

フィンランドのアーティトインレジデンスArtelesのユニークなルールの一つ、週末の「サイレントデイズ」があります。インターネット断食の加え毎週末の二日間、私たちは会話はおろか挨拶もしません。ただひたすら己に向かうのです。日本で静かな生活を送る私には心地よい週末、イタリア系のルーツも持つ写真家アイオナに言わせると「おしゃべりができないなんて、ぢごくだわ….。」

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おしゃべり大好きナンバーワンのティムもこの日は黙々と。。。

西洋人のおしゃべり好きには驚きました。毎日まいにち同じメンツでよくこうも話すことがあるなと思います。イギリス生活10年以上の友人曰く、「日本人以外は本当におしゃべりが好き、会話を楽しむのが好き」なのだそう。

よく西欧では自分を主張できないといけないと脅されて(?)きましたが、おしゃべりである必要はないというのが私の実感です。要は「何をしている人なのか、何を考えているのだかよくわからない」ことが彼らの不安や不快感を煽るのではないかと思います。

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独自の装置を持ち込んで集中する、コーリアンのジーヨンは鍵盤楽器も得意。絶対音感の持ち主でした。

創作が目的でありつつも、共同生活の中お互い気持ちよく生活したいもの。それに制作に向かう時間はたっぷりあります。彼らとの食事やレクリエーションの参加は息抜きであり刺激があり、楽しい経験です。

レジデンツのメンバーは13人で年齢幅は60代から20代まで。男女半々で国籍は様々でした。悠長な英語で振る舞えない、長いおしゃべりがストレスに感じる私は、初頭に催された自由参加のカジュアルプレゼン(結局全員参加)に加わりました。私という人間がどういう創作をするのかを知ってもらうためです。その後は自分の得意範囲での”コミュニケーション”をとりました。パーティの時やちょっとしたタイミングで写真を撮って彼らにあげる。自分に不要なストレスを与えず、且つ20代のアーティストはママにも送ったよ!と喜んでくれました。それらの写真は許可のもと、このようにブログにも使用しています。

Arteles Silence Awareness Existence Retreat residency program Winter 2019-20 in Finlandの募集を開始したそうです。https://www.arteles.org/sae_residency.html

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令和元日 

光が降り注ぐ令和初日となりました。

節目の日というのはいいものですね。気持ちも引き締まります。

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写真は2018年夏、山形月山で製作した未発表「星が落ちていた」より 「叡智」のイメージをテーマにした作品です。(使用カメラLeicaS2)

 

日本という国が叡智に満ちた美しい国となりますよう。そして世界が平和になりますように。

平和。月並みなことばを少し噛みしめる年齢に、私もなりました。

 

2019年5月1日

A.I.R滞在記その13  インターネット断食 困ったこと 

5日目にサロンとよばれる集まりがありました。強制参加ではありませんが、過去の作品をプレゼンするというもの。私にとって”プレゼン”という響きはぐっと緊張感が増します。その上英語でやらねばなりません。実は作品発表は特に記されていなかったため、用意をしておりませんでした。更に私は思っていた以上にできない自分の英語力に途方に暮れていました。プレゼンレベルとなるとスラスラ、ペラペラ….。

困りました。アンチョコが必要です。私は密かにインターネット断食の掟を破り、 auの国際データローミング(980円/24時間)を一日繋げ、グーグル翻訳の助けを得ながら英文を作る事にしました。文章表現が即座に調べられるネット検索は本当にありがたいものです。”Mr.Google”は頼もしい。イギリスに10年以上いた友人のオススメは「Google翻訳」アプリ。カメラ翻訳や手書き入力もできます。

Artelesのプレゼンスタイルは気さくなものでした。カウチでくつろぎながら壁に映写された作品を眺めつつ制作意図を聴きます。作品に影響を与えた自身の生い立ちやルーツなどを語る人も多かったです。

プレゼンは終わりました。聞き取れないところも多々あったのですが、彼らの素晴らしい発想や表現に感銘を受け、参加してよかったとつくづく思いました。

そして後日。カナダのアーティストLouiseが「Asako、この人検索して見て、きっと好きな作風よ」と紙切れを差し出してきました。でもネット断食中だし見れないというと「知ってるわよ〜、wifi にasakoshimizu iphoneって出てきたもの!」

バレていました。。。

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クリスタルツリーを眺めながら。(2019年1月)

 

2019年4月25日

A.I.R滞在記その12  インターネット断食

フィンランドのアーティストインレジデンスArtelesのプログラムの一つにネット断食がありました。

wi-fiは意図的に遮断されますが完全に使えないわけではありません。インターネットルームがあり、予定表に使用希望日と時間を書き込み、断続的な利用ができます。私は常にネットに繋がり、メールやSNSがチェックや調べ物ができる環境から身を離すことになりました。

下記は現地で書き留めたメモです。

「ネット断食が始まり、最初の1日半はふと意味もなくメールやインスタを見ようとIphoneに手を伸ばす自分がいた。これは明らかに中毒症状。使用回数は必要以上ということだ。

制限がありながらも使用こともできるという環境が、快適で解放された気分を自分にもたらしている。これは創作に集中させてもらえる空間、多くの気心あう種国籍多様なメンバーと生活する、自分の置かれた精神的な環境が恵まれていたこともある。

必要以上に見てしまう日々の積み重ね。これが1ヶ月、1年、10年と考えた時、どれほど自分に影響を及ぼすのか。いつしか、自分の意思が蚊帳の外になる。クリエイティビティや物の捉え方に悪影響はないのかという疑念が頭をよぎる。」

何事もバランスの良さが大切なのでしょう。この4週間弱のWI-FI断食は、一度自分とネットの関係性を見直し、リズムを考えるための良い機会となりました。このGWにもやってみようかな。次はその困った点について書きます。

 

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2019年4月23日

映画「幸福なラザロ」コメントを書かせていただきました。

渋谷Bunkamuraで公開中の「幸福なラザロ」。

「世界を2つに分けるとき、私の中のラザロは消えてしまう。見事な映像の語りが真理の問いかけを挑んでくる。心奪われました。写真家 清水朝子」
新規ドキュメント 2019-03-29 21.43.23_1

 

実際に起きた事件を題材に、穏やかで不思議なラザロを軸に展開するこの物語はなかなかスリリングなのです。しかしラザロの存在のおかげで安心して内容を探っていけます。「良いの良いの先は、悪いの悪いの先はなんだろう?」私はそう思いました。

秀逸な作品、映画らしい映画です。ぜひ。

2019年4月21日

映画 「バイス」 「記者たち 衝撃と畏怖の真実」

この映画を見て、先日ラジオで紹介されていた良寛の言葉を思い出しました。
「今日、是とせしところ/いずくんぞ、昨日の非にあらざることをしらん」
意味:昨日良いと言われたことが、きょうは悪いと言われる。
きょうの良いが、昨日は悪いと思われていたことを知らなきゃいけない。

 

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一元的な操作。知らぬ間に”ノセられる”怖さ。難しいですが、自身の俯瞰の目と慎重さを意識したいです。

 

それにしてもクリスチャンベールは本当に一人なの?と思うほど、役それぞれの別人ぶりですよね。「バイス」の毒々しいコミカルさは内容がキツイだけに個人的には救われました。

A.I.R滞在記その11 驚きのフィンランド公共サウナ

スタッフに地元の公共サウナに連れて行ってもらいました。

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噂は本当だった…..( ゚д゚ )!!  ( 注: 1月のフィンランドです)

そうです、これが噂の…..凍った湖で体を冷やす!中にはひと泳ぎしている方もいます。私も慣れたもので温まった体で雪景色を眺めながら外で冷やしていましたので、トライ。ですが、冷たいを通り越して、痛い、骨が痛い!すぐに膝下で断念。これは無理でした。レジデンツアーティストは肩まで湖に身を沈めていました。西洋人とは体の作りが違う、肉の厚さも違う!と思った私です。

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体を冷やしてまたひとっ風呂ならぬ、ひとサウナへ向かう。。

「フィンランド人は健康志向なんだね。」「サウナだけね・・・。」とスタッフのイダちゃん。「心臓発作にならないの?」「心臓も強いみたい。」

帰国後、サウナに行ったのですが、やはり木の小屋のサウナとエレクトニックサウナはなんだか、いえ大いに心地よさが違う。都心に住むファインランド人もそういうのだそうです。また入りたいな、フィンランドサウナ。

2019年4月2日記載

映画「幸福なラザロ」試写会

可愛らしい顔立ちにまっすぐな瞳。その印象とは裏腹にストーリーはなかなかスリリングでした。見事な映像の語り、観るものに解釈の自由さを委ねたまさに映画らしい映画です。心奪われました。http://lazzaro.jp

”対比”がちりばめられています。その魅力をデジタルではなくスーパー16mmというフィルムで撮影。

  4月19日より@Bunkamuraル・シネマ(東京 渋谷)

 

 

A.I.R滞在記その9 1日の行動とカメラバック

冬のフィンランドの日照時間は短く、1月は6時間を切る日々。朝9時頃に空全体が明るくなり、午後3時から日没に向かいます。地元の人はまだ暗いうちに出勤や登校をしていました。 _ASN0424-2
私は薄暗い8時に機材を背負って静かに宿舎を出ます。そして徒歩で周辺散策開始。国際免許は取得しましたが、交通ルールの違い(右車線左ハンドル)と凍結した道路を見て運転を断念しました。私は慎重なタイプ。
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 水筒に暖かい紅茶とアガベシロップを入れ、疲れた時のためにぶどう糖の飴とナッツ。3時間も外に出続けると限界がきて昼前に一度宿に戻り休憩。そして薄暗くなる3時くらいから機材背負ってまた動き出します。マグマカイロは従来のものより寒気に強かったです。カイロがなければ、私の創意は寒さで早々に削がれていたと思います。
左は今回持参したVANGUARD4輪タイプ、自身3台目のALTA シリーズ FLY58T。右は機内持ち込みが可能な2輪タイプALTA FLY48T。ほか小ぶりなリュックタイプも持ってゆきました。 https://www.vanguardworld.jp_ASN2323右は小さく見えますが、機材の入る容量は同じくらいと感じました。撮影現場をよく理解された方がデザインしたような、使い勝手に配慮を感じるバックなのでお気に入りです。
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 ひたすら自身の創造活動に向き合う日々は、幸福と焦燥感が交互に入り混じる、濃密で静かな時間です。
 

A.I.R滞在記その8 Tampereに買い出し

スタッフの運転で画材などを買いに宿舎から1時間ほど商業都市Tampereに行きました。

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ボク、カメラ欲しいんだよね、とアメリカ人ポール

まずは画材屋さんmalkkiへ。 http://www.malkki.fi

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そして次の目的地カメラ屋さんのKAMERATORI へ向かいます。https://kameratori.fi

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レジデンツアーティストはフィルムで撮影する人が二人いました。現像済みのネガをスタジオでスキャンしパソコンに取り込むのです。アイオナはルーマニアとイタリアのハーフ。画像を重ねて独自の世界観を作る写真家です。

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「利用者が減って、コスト減のため今は一括現像。だからこの増感処理は無理だよ。」ここで現像できない1本がありショックなアイオナ。。

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お店に人に一声かけて、撮影会。

ポールが中古カメラを物色中、私たちはこの不思議な空間で撮影会。
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3時にはこの暗さのフィンランド。さてみんなで帰ろう。